4月号

複式簿記のすすめ 合理的な事業経営にむけて[2014年4月号]

複式簿記を習得すると、税制上の特典を受けられるだけでなく、事業においても経営状況を客観的に分析するための貴重な情報を得られます。難しいイメージがある複式簿記ですが、記帳や集計等のルールを覚えてしまえば、簡単に習得することができます。複式簿記による記帳の概要について解説します。

複式簿記を習得する利点

複式簿記を習得すれば、収入と経費から利益を計算する「損益計算書(青色申告決算書1面)」に加えて、資産・負債・資本から財政状況を確認する「貸借対照表(青色申告決算書4面)」を作成できます。これにより、青色申告特別控除65万円の適用を受けることができるほか、合理的な経営を図ることができます。
税制上の特典
・青色申告特別控除65万円の適用
※事業的規模でない不動産所得のみの方は特別控除10万円の適用となります。
事業における主な利点
・事業の資産・負債・資本等を把握し、合理的で裏付けのある経営ができる
・取引先など、公開されている財務諸表から他社の状況を把握できる
・金融機関など、融資の審査等をおこなう機関からの信用が高まる

簡易帳簿との違い

現金出納帳など簡易帳簿を利用した記帳では、現金残高のほか、収入や経費の金額を把握することができますが、その他の資産や借入金をはじめ負債の額などを帳簿等から把握することが難しくなります。
一方、複式簿記では、取引を「収入・経費・資産・負債・資本」の勘定科目を用いて記帳および集計するため、全ての勘定科目の合計金額や残高を把握することができます。

複式簿記の記帳のながれ

複式簿記の記帳は、まず取引の内容を振替伝票に記入します。振替伝票に記入した勘定科目等をもとに、総勘定元帳に金額等を転記して集計します【図表1】
総勘定元帳は月ごとに締切り、月次で金額を集計して残高等を計算します。総勘定元帳の月次集計金額をもとに、合計残高試算表を作成し、振替伝票から総勘定元帳に正しく転記・集計されていることを確認します。

複式簿記のルールを覚えましょう

取引を記帳する際に使用する全ての勘定科目は、「収入・経費・資産・負債・資本」の5つのグループに分類されます。
振替伝票には、勘定科目を「借方」または「貸方」に記入しますが、「借方」「貸方」のどちらに記入するかによって、金額の増減が変わります【図表2】。勘定科目の分類と記帳ルールを覚えてしまえば、あとは勘定科目と金額を振替伝票に記入し、総勘定元帳へ転記していくだけです。

記帳時には取引を分解しましょう

記帳時には、その取引を「原因」と「結果」の視点から分解します。
例えば、現金売上の取引を記帳する際には、「売上」が発生したという事実が原因となり、結果として「現金」が増えたという具合です。
このように、取引を原因と結果で分解し、勘定科目の記帳ルールをもとに借方と貸方に区分しながら記帳していくのです。
講習会等にぜひご参加ください!
各青色申告会では、複式簿記の講習会を開催しています。本稿の内容を参考に講習会等へ参加することで、よりいっそう理解が深まります。講習会等にぜひご参加ください。
[カテゴリ:帳簿][2014年4月号 7ページ掲載記事]
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