8・9月号

消費税 インボイス制度のあらまし(その1)[2021年8・9月号]

消費税のインボイス制度のあらましを2回に分けて掲載します。消費税の納税義務のない免税事業者も事業経営に大きな影響があります。わからないことは、ご所属の青色申告会や税務署でご相談ください。

インボイス制度とは

令和5年10月1日より、適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)が導入されます。これ以降、課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、仕入れ先などから受け取った適格請求書などと仕入れの事実を記載した帳簿の保存が求められます。
適格請求書を発行できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者に限られます。
また、課税事業者が、適格請求書発行事業者の登録を受けることができます。
※ 仕入税額控除とは、課税売上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を差し引くことをいい、原則として、その差額が消費税の納付税額になります。免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、原則として仕入税額控除の適用を受けることができません。ただし、インボイス制度の導入後、一定期間は経過措置が設けられます(次回「その2」で解説)。

適格請求書に記載すること

適格請求書とは、取引の相手先などから受け取る領収書(レジペーパーなどのレシートを含む)、請求書、納品書などの書類で、適用税率や消費税額、発行者の登録番号などの記載要件が満たされたものをいいます。書類の様式や名称は問いません。
記載事項を区分記載請求書等保存方式とくらべると図1になります。
また、手書きの領収書のイメージは図2になります。

インボイス制度導入後の留意点

売り手の場合

適格請求書発行事業者は、原則として、取引相手(課税事業者)の求めに応じて適格請求書を交付する義務および交付した適格請求書の写しを保存する義務があります。
※ 不特定多数の者に対して販売などをおこなう小売業、飲食店業、タクシー業などの取引については、適格請求書の交付に代えて、適格請求書の記載事項の一部を簡略化した適格簡易請求書を交付することができます。
適格請求書を交付することが困難な次の取引は適格請求書の交付が免除されます。
① 公共交通機関での旅客の運送
※ 3万円未満のものに限ります。
② 出荷者などが卸売市場においておこなう生鮮食料品などの譲渡
※ 出荷者から委託を受けた受託者が卸売業務としておこなうものに限ります。
③ 生産者が農協、漁協または森林組合などに委託しておこなう農林水産物の譲渡
※ 無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずにおこなうものに限ります。
④ 自動販売機・自動サービス機によりおこなわれる課税資産の譲渡など
※ 3万円未満のものに限ります。
⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス
※ 郵便ポストに差し出されたものに限ります。

買い手の場合

保存が必要となる適格請求書などには、次のものが含まれます。
㋐ 売り手が交付する適格請求書または適格簡易請求書
㋑ 買い手が作成する仕入明細書など
※ 適格請求書の記載事項が記載されており、相手方の確認を受けたものに限ります。
㋒ 前述の②、③の委託取引にかかわる書類
㋓ ㋐から㋒の書類に係る電磁的記録
※ 適格請求書の交付を受けることが困難な次の取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
○ 適格請求書の交付が免除される前述の①、④、⑤の取引
○ 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)を満たす入場券などが、使用の際に回収される取引
○ 古物商・質屋・宅地建物取引業・リサイクル業などを営む事業者が適格請求書発行事業者ではない者から古物、質物、建物、再生資源などを取得する取引
○ 従業員などに支給する通常必要と認められる旅費、宿泊費、日当、通勤手当など
[カテゴリ:シリーズ,消費税][2021年8・9月号 8-9ページ掲載記事]
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