小規模企業は大企業と比べると不利といわれた時代もありましたが、風向きは変わりつつあると感じます。その理由について、
図表2で順を追って考えてみましょう。
小規模企業には、規模の小ささと数の多さという特性があります。そして規模の小ささは、さらに
①生産性の低さ、
②柔軟性、
③頑健性といった特性を生みます。スケールメリットを生かしにくいという点は弱みかもしれません。しかし、組織がシンプルで小回りが利く柔軟性や、固定費が少なく、採算ラインを低く抑えているため頑健であるといった特性は、小規模企業の強みともいえるでしょう。
数の多さは、
①多様性と
②遍在性という特性につながります。事業内容や働き方などの異なるたくさんの企業が層を成すことで、多様性が生まれます。遍在性とは、全国のいたるところに存在しているという意味です。消費者の身近に存在し、ラストワンマイルの需要にしっかり対応できるのが、遍在性を持つ小規模企業ならではの強みであるといえます。
これらの特性があるからこそ、社会において果たせる役割があります。柔軟性と多様性があるから、消費者や労働者の多様なニーズの受け皿となれる。頑健性と遍在性があるから、社会基盤の担い手となれる。そしてこれらの役割を果たすことで、小規模企業は社会に個性と持続可能性という価値をもたらすのです。
しかも、これからの社会における構造変化は、小規模企業にとって追い風です。技術の進歩やネットの普及といった環境変化がそれまでの弱みを補完し、小さくてもできることは拡大していきます。そして少子高齢化や地域活性化など、重要度が増している社会的課題を解決するうえでは、小規模企業の強みが生きます。小さいからこそ、あるいは数が多いからこそできることへの期待が広がっていくわけです。こうした変化を踏まえ、このコロナ禍を逆風ではなく、追い風に変えていただくことができればと切に願う次第です。
(文責在記者)