10・11月号

令和5年度 税制改正要望意見[2022年10・11月号]

全国青色申告会総連合は、令和5年度税制改正要望意見を取りまとめました。新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受ける個人企業の経営活力を取り戻すため、要望実現に向けて運動に取り組みます。ご支援、ご協力をお願いいたします。

最重点要望事項

Ⅰ 個人所得課税

1.青色事業主勤労所得控除の早期実現

わが国には、個人事業主の勤労性所得を認める税制上のしくみはない。一方、個人企業と経営実態が類似する同族法人企業の社長には、役員報酬が支払われ、給与所得控除が認められている。両者に共通する勤労性所得に対する課税のあり方に不公平が生じている。このため個人事業主と社長とでは、所得税・住民税の税負担に大きな格差がある。
また伝統的な自営業者が減る一方、給与所得者に類似した雇用的自営業者やフリーランスが増えるなど働き方が多様化している。働き方の違いによって不利益が生じない公平な税制を構築すべきである。
真面目な記帳と納税を実践する青色申告をおこなう個人事業主に、勤労所得控除の適用を所得税法上に認めることで、課税のあり方を公平にすることができる。青色事業主勤労所得控除の早期実現を要望する。

2.一定の要件に該当する事業的規模にいたらない不動産所得者の青色申告特別控除10万円を20万円へ引き上げ

正規の簿記の原則により記帳し、イータックス等により申告する事業所得者や事業的規模の不動産所得者は、青色申告特別控除55万円・65万円が適用されている。
昨今、都市部では不動産所得者の増加が著しい。こうした不動産所得者の中には、事業的規模にいたらないため、正規の簿記により記帳しイータックス等で申告しても、半世紀以上にわたり据え置かれている青色申告特別控除10万円の適用が受けられるのみである。
事業所得者・不動産所得者全体の記帳水準の向上をはかるため、事業的規模にいたらない不動産所得者が正規の簿記の原則により記帳し、イータックス等により申告した場合には、青色申告特別控除10万円を20万円に引き上げることを要望する。

3.個人事業主に係る純損失の繰越期間の延長

青色申告をおこなう法人の欠損金額の繰越期間は、平成28年度の税制改正により10年間とされている。一方、青色申告をおこなう個人事業主の純損失の繰越期間は3年間に据え置かれ、個人と法人との間に制度格差・不公平が生じている。
新型コロナウイルス感染症の影響により、自助努力をしてもなお赤字経営に苦しんでいる個人事業主が多数いる。個人企業の事業継続のためにも、令和4年分以降に生じた各年分の純損失の金額を10年間(現行3年間)にわたり繰越控除することを要望する。

4.災害損失控除の創設

東日本大震災や熊本地震などの地震災害、豪雨や台風による風水害が発生し、甚大な被害をもたらしている。自然災害による被災者の被災資産の再建等には相当な年月を必要とする。現行の雑損控除から自然災害による損失を分離して、あらたに災害損失控除の創設を要望する。
災害損失控除の創設にあたっては、同控除以外の所得控除を適用した後に災害損失控除を適用することとする。また、法人税における災害損失欠損金の繰越期間が10 年であることをふまえ、所得税にあらたに創設する災害損失の繰越期間は災害損失の金額をすべて控除しきることを前提に設定すべきである。なお、災害損失の金額には、自然災害による資産損失のほかに、避難や移転にともなう災害関連支出も含めることとする。


1.適格請求書等保存方式(インボイス制度)の廃止または凍結

令和5年10月1日より導入が予定されている「適格請求書等保存方式」(いわゆるインボイス制度)への移行により、免税事業者が取引から排除されることや小規模事業者の納税にかかる事務負担の増加が想定される。
消費税課税事業者は、消費税導入以来、請求書等にもとづいて、取引を課税・非課税・不課税等に区分して記帳することで適正申告を担保してきた。軽減税率の場合でも適用税率等が記載された現行の区分記載請求書等により、引き続き適正申告をおこなうことができる。
インボイス制度は廃止または凍結し、令和5年10月以後も現行の区分記載請求書等保存方式を堅持することを要望する。

2.軽減税率制度の見直し

軽減税率制度は対象品目の取扱いを見直すことを要望する。また、生活に直結する必需品にかかる軽減税率については、制度の設立の趣旨をふまえ、低税率に据え置くよう十分に配慮することを要望する。


[カテゴリ:全青色, 税制改正][2022年10・11月号 4-6ページ掲載記事]
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