2・3月号

青色申告会の要望実現 令和5年度 税制改正大綱[2023年2・3月号]

与党は令和4年12月16日、令和5年度税制改正大綱を発表しました。個人事業者に係るおもな内容の概要を掲載します。

青色申告会の税制改正要望

青色申告会の税制改正要望意見(令和4年10・11月合併号既報・関連リンク参照)の最重点要望事項のうち、次の要望が実現しました。

(1)インボイス制度の廃止・凍結

インボイス制度の廃止・凍結はかないませんでしたが、次の経過措置などが設けられることになりました。

① 免税事業者が適格請求書発行事業者になった令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間について、納付税額を売上げなどの課税標準額に対する消費税額の2割とする。
② 課税売上高が基準期間で1億円以下または特定期間で5千万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日まで、1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除を可能とする。
③ 振込手数料相当が差し引かれて売掛金が入金する場合の値引きなど、1万円未満の返還に係るインボイスは交付義務を免除する。

(2)災害損失控除の創設

法人並みの繰越期間10年はかないませんでしたが、特定非常災害による損失について繰越期間が3年から5年になりました。

① 事業用資産等について
特定非常災害の指定を受けた災害で事業所得者などが保有する棚卸資産や事業用資産などに生じた損失(特定被災事業用資産の損失)が、保有する事業用資産等(土地等を除く)の10%以上を占めるとき、次の繰越期間が5年(現行:3年)になります。
㋐ 青色申告者は、被災事業用資産の損失による純損失を含むその年分の純損失の総額。
㋑ 白色申告者は、その年に発生した被災事業用資産の損失による純損失と変動所得に係る損失による純損失との合計額。
※ 特定被災事業用資産の損失の割合が10%未満の場合には、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額について繰越期間が5年に延長されます。

② 個人の保有する住宅や家財等について
特定非常災害の指定を受けた災害で個人の保有する住宅や家財等に生じた損失に雑損控除を適用し、その年分の総所得金額等から控除しきれなかった損失額の繰越期間が5年(現行:3年)になります。

(3)青色事業主勤労所得控除の早期実現

次のとおり、検討事項に記載されました。
小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

個人事業者に係るおもな改正(抜粋・要旨)

所得税
届出書提出期限の変更と記載事項の簡素化
個人事業の開業・廃業等届出書と青色申告の取りやめ届出書の提出期限がその事業の開始等の事実や取りやめがあった日の属する年分の確定申告期限になるとともに、青色申告承認申請書等の記載事項の簡素化などがおこなわれます。
※ 改正は令和8年または9年におこなわれます。

消費課税
適格請求書発行事業者の登録の見直し
免税事業者が課税期間の初日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、その課税期間の初日から起算して15日前(現行:1月前)の日までに登録申請書を提出する、また免税事業者が登録を受けた日から課税事業者になる経過措置の適用を受ける場合には、登録申請書に提出日から15日を経過する日以後の登録希望日を記載する、など一部が見直されます。

資産課税
相続時精算課税制度の見直し
相続時精算課税の適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別に、課税価格から基礎控除110万円を控除できるとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の算出時に加算される財産の価額は控除後の残額とされます。

生前贈与加算の見直し
生前贈与から7年(現行:3年)以内に、贈与者が亡くなり、その財産を相続する場合には、その生前贈与により取得した財産の価額(相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとされます。
※ 上の2つは、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税に適用されます。

教育資金等の一括贈与の非課税措置の延長
両親・祖父母などの直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置は一部見直しのうえ3年延長、直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置は一部見直しのうえ2年延長されます。
※ 令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税に適用されます。

その他の国税
車体課税の見直し
排出ガスや燃費の性能が優れた自動車の自動車重量税を減免するエコカー減税は、令和5年12月31日まで現行制度を継続し、基準が引き上げられたのち、令和8年4月30日まで延長されます。
※ 自動車税・軽自動車税も基準の引き上げがおこなわれます。

電子帳簿保存制度の見直し
優良な電子帳簿保存の要件を満たす場合の過少申告加算税の軽減措置について、対象となる帳簿が明示されました。また、電子取引を電磁的記録のまま保存する制度については、売上高5千万円(現行:1千万円)以下または出力書面の提示などに応じることができる事業者は、税務調査で電磁的記録のダウンロードに応じることができれば検索要件のすべてが不要とされます。また、電磁的記録のまま保存できなかったことに相当の理由があると認められ、税務調査で出力書面の提示などができる場合は、保存要件にかかわらず、電磁的記録の保存ができることとされます。

加算税の見直し
無申告加算税の割合について納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合が30%(現行:15%、納付すべき税額が50万円を超える部分は20%)に引き上げられるなど、見直しがおこなわれます。
※ 令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税に適用されます。

[カテゴリ:税制改正大綱,税制改正,要望意見,全青色][2023年2・3月号 4-6ページ掲載記事]
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