12・1月号

令和6年分決算準備のポイント[2024年12月・2025年1月号]

令和6年分の所得税の確定申告に向けて、決算の準備をしましょう。

記帳の内容確認とモレや誤りの修正

記帳内容を確認し、モレや誤りがあるときは記帳の追加や修正をします。領収書などの保存書類と記帳内容を突き合わせるほかに、次の確認方法があります。
◇現金などの実際のあり高(※1)や取引先から受け取った書類(預貯金通帳の残高や請求書に記載された買掛金残高など)が、帳簿の残高と合っているかを確認する。
◇売上(収入)や仕入、必要経費について、各月の取引金額とその年間の合計をまとめた月別集計表を作り、月や年の単位で、大きく異なる金額がないかを確認する。

※1 現金や棚卸資産などは、帳簿の残高がマイナスになることはありません。

棚卸表の作成と必要経費算入額の計算

令和6年の必要経費となる「商品など」の売上原価や「消耗品など」の消耗品費は(※2)、それらの1年間の仕入高や購入高に年初と年末の棚卸高を加減して求めた金額になります(図表1)。年末の棚卸高は、種類・品質・型などに分けて実地に棚卸しをおこない、それぞれの12月31日現在の棚卸高(棚卸数量×単価)を棚卸表にまとめます(※3)。単価は、原則として年末に一番近いときに取得した単価とする最終仕入原価法により求めます(※4)。災害で損傷したり、棚ざらしや流行遅れなどで陳腐化して、通常の価額では販売できないものや、通常の方法で使うことができないものは、12月31日現在の処分可能価額を単価とすることもできます。

※2 「商品など」は、商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・副産物・仕損じ品・作業くずなどです。「消耗品など」は、未使用の包装材料、ガソリンや事務用品などの消耗品、使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の工具・器具・備品などの資産で未使用のものです。
※3 実地の棚卸しを12月31日ではなく、その前後にする場合は、実施日と12月31日との間の売上や仕入などから12月31日現在の在庫数量を計算します。なお、商品有高帳を作って日々の商品の受け入れや払い出しを記録し、毎年一定の時期に実地棚卸しをおこなって、その内容を確認している場合は、年末の棚卸しを省略できます。また、消耗品のうち、毎年おおむね一定数量を買って経常的に使い、年末の棚卸数量が通常の年に比べてとくに増えていないものは、棚卸しを省略できます。この場合は継続的な適用を前提として、その年の購入高を必要経費にすることができます。
※4 棚卸資産の評価は、あらかじめ税務署へ評価方法(先入先出法や総平均法、売価還元法、低価法など)を届け出ているときはその方法、届け出ていないときは最終仕入原価法でおこないます。

帳簿の整理

損益計算書にのる収入や必要経費は、今年の収入とするべき金額や収入を得るために直接かかった費用です。記帳していないものや記帳しているけれども除くべきものを整理して、令和6年分の収入や必要経費を確定します。主なものは次のとおりです。

① 売掛金、買掛金、未払費用
商品やサービスなどの引き渡しが済んで対価(代金)が確定しているにもかかわらず対価のやり取りを終えていないために記帳していない売上や仕入、必要経費があれば、本年分として記帳します。その未精算の金額が売掛金、買掛金、未払費用です。

② 前受金、前払費用
対価のやり取りを終えたために記帳してある収入や必要経費のうち、商品やサービスなどの引き渡しがまだ済んでいないものや、翌年以後に対応する先払いした経費(年の途中で支払った年払い保険料など)があれば、本年分の収入や必要経費から除きます。その金額が前受金、前払費用です。

③ 自家消費
商品などを業務や家事に使う自家消費は、収入に計上します。原則は、その商品の通常の販売価額を収入金額としますが、「通常の販売価額×70%」と仕入金額のいずれか大きい方の金額にしても差し支えありません。業務に使った場合は、同額を該当する必要経費に計上します。

④ 家事関連費
業務と家事の両方に使う車両にかかわる費用などの家事関連費は、業務の遂行上直接必要であることが取引記録や帳簿などにもとづいて明らかにできる金額を、必要経費にすることができます。業務に使う時間、頻度、量、面積などを総合的に勘案して基準を定めて、家事分を合理的に計算(家事あん分)して必要経費から除きます(※5
※5 家事あん分は、家事関連費を支出するつどおこなう方法と、いったん全額を記帳しておいて決算で一括してあん分をおこなう方法の2つがあります。

⑤ 修繕費と資本的支出
業務に使う固定資産などの通常の維持管理や修理のための修繕費は必要経費になります。しかし、修理や改良などにより資産の使用可能期間が延びたり、価値が増したりしたときは、その支出した金額を資本的支出とします。修理などをおこなった資産と種類および耐用年数が同じ減価償却資産をあらたに取得したものとみなして償却費を計算し、必要経費にします(※6)。
※6 資本的支出になる修繕であっても、ひとつの資産に支出した金額が年間20万円未満のときや、おおむね3年以内の周期でおこなう修理であるときなどは必要経費にしても差し支えありません。

⑥ 減価償却資産の売却
車両運搬具や器具・備品など減価償却資産の売却代金は、事業所得になる一定のもの(※7)を除いて、譲渡所得の収入金額になります(※8
※7 取得価額が10万円未満のもの、使用可能期間が1年未満のもの、一括償却資産(図表2)としたものなど特定の事業用資産の売却代金は、事業所得の収入金額になります。
※8 年の途中で譲渡した減価償却資産の減価償却費は、譲渡所得の計算上取得費として控除するか、事業所得などの計算上必要経費にするか、事業者が選択することができます。

減価償却費の計算

本年中に取得した使用可能期間が1年以上の減価償却資産は、その取得価額により、図表2のとおり取り扱います。1年未満の減価償却資産の場合は、取得価額をその年の必要経費にすることができます。
取得価額は、資産の本体価格だけでなく、使い始めるまでにかかった費用を含みます。車両の購入であれば、納車費用や自動車取得税などの一時的な支出は取得価額です。自動車税や保険料など定期的に生じる支出はその年分を租税公課や支払保険料などの必要経費(※9)とし、リサイクル預託金は将来の費用の前払い分で資産にします。
※9 中古の自動車を取得した際に、前所有者が支払った自動車税の未経過分を支払う場合、その金額は取得価額に含めます。

事業上の損害や損失の処理

災害などによって、商品などの棚卸資産、建物、機械・装置、器具・備品などの事業用固定資産などが滅失や損壊したとき、また、事業用固定資産を取り壊したり、廃棄したりしたときは、取り壊し費用やかたづけ費用などを含め、その損失額をその年分の必要経費にします(※10)。
他者が原因で、店舗が壊れたり、棚卸資産などに損失が生じたりしたときは、受け取った保険金や損害賠償金、休業などによる収益減の補償として受け取る補償金などを、収入(区分はその他の収入)にします。そして、その損害による支出(修繕費、廃棄費用など)や補てんされた支出(ケガをした従業員の給与など)がある場合には、それらの金額を必要経費にします(※11)。
※10 災害時の税務上の取り扱いについて、詳細は「災害関連情報(国税庁ホームページ)」または最寄りの税務署でご確認ください。
※11 交通事故などで心身に加えられた損害があり、業務に従事することができなかった場合に収益の補償として受け取る損害賠償金や慰謝料は収入金額には含めません。所得税法上の非課税所得になります。

貸倒損失

売掛金や未収金、貸付金、前渡金など事業の遂行で生じた債権が、相手先が倒産などで支払い能力を失ったために回収不能となった場合には、その回収不能となった年の貸倒損失として必要経費にします。
[カテゴリ:確定申告,所得税,決算,帳簿][2024年12月・2025年1月号 4ページ掲載記事]
list page