2・3月号

令和7年度 税制改正大綱[2025年2・3月号]

与党は令和6年12月20日、令和7年度税制改正大綱を発表しました。同大綱から個人事業主に係るおもな改正を抜粋して、あらましを掲載します。

青色申告会の税制改正要望

青色事業主勤労所得控除制度の早期創設

青色事業主勤労所得控除制度の早期創設は、次のとおり検討事項に取り上げられました。
小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化や、同族会社や給与所得者との課税のバランスを踏まえ、個人事業主の勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討を進める。

個人事業主の事業承継税制の円滑な運用

個人版事業承継税制における事業従事要件が、贈与の直前(現行:贈与の日まで引き続き3年以上)に特定事業用資産に係る事業に従事していればよいこととなります。

個人事業主に係るおもな改正(要旨)

【所得税】

㋐基礎控除の見直し
基礎控除について、合計所得金額が2350万円以下の個人の控除額が10万円引き上げられ、全体は図表1になります。

㋑給与所得控除の見直し
給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられます。
※与党と国民民主党の幹事長間で合意された、いわゆる「103万円の壁」を178万円を目指して引き上げる具体的な実施方法については、引き続き協議されることになっています。

㋒特定親族特別控除(仮称)の新設
生計を一にする19歳以上23歳未満の親族等(配偶者・青色事業専従者を除いた合計所得金額が123万円以下の者に限る)で控除対象扶養親族に該当しない者がいる場合、図表2の特定親族特別控除(仮称)が適用されます。

㋓各種控除の要件などの見直し
同一生計配偶者および扶養親族の合計所得金額の要件が58万円以下(現行:48万円以下)、ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件が58万円以下(現行:48万円以下)、勤労学生の合計所得金額の要件が85万円以下(現行:75万円以下)、家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例における必要経費算入の最低保障額が65万円(現行:55万円)に、それぞれ10万円引き上げられます。
※㋐から㋓の改正は令和7年分以後の所得税に適用されます。なお、それぞれの改正について、個人住民税でも所要の見直しがおこなわれ、令和8年度分以後の個人住民税に適用されます。


㋔子育て世帯の生命保険料控除の拡充
23歳未満の扶養親族を有する場合、令和8年分の新生命保険料の一般生命保険料控除の控除額の計算が図表3になります。
※一般生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料の控除額の合計適用額は現行と同じです。


㋕住宅ローン減税の子育て特例の延長
40歳未満で配偶者のいる人、40歳以上で40歳未満の配偶者のいる人または19歳未満の扶養親族のいる人に適用される住宅ローン減税の子育て特例が1年延長されます。

㋖国民年金基金の掛金額の見直し
国民年金基金の掛金額の上限が月額7万5千円(現行:6万8千円)になります。

㋗確定申告書の添付書類の見直し
小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除または地震保険料控除の適用を受ける場合に、控除証明書の添付または提示に代えて、明細書を添付することができます。
※令和9年1月1日以後に提出する令和8年分の確定申告書から適用されます。

【消費税】

㋘外国人旅行者向け免税制度の見直し
対象物品の範囲や販売手続きなどの見直しがおこなわれるとともに、出国時に持ち出しが確認された場合に消費税相当額を返金する「リファンド方式」に変更されます。
※この改正は、令和8年11月1日以後におこなわれる免税対象物品の譲渡などに適用されます。

【その他の国税】

㋙電子帳簿等保存制度の見直し
電子取引について、定められた基準に適合するシステムを使って、データの送受信・保存をおこなう場合は、隠ぺい・仮装に係る重加算税の加重措置の対象から除外されます。また、青色申告特別控除65万円について、現行の適用要件(優良な電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告)のほか、電子取引について定められた基準に適用するシステムを使って、データの保存をおこなう場合が追加され、令和9年分以後の所得税から適用されます。

[カテゴリ:全青色, 税制改正運動][2025年2・3月号 4-5ページ掲載記事]
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