11月号

平成26年度 税制改正要望意見[2013年11月号]

地域社会を支える小規模事業者の経営環境はいぜん厳しい。全青色は各地の青色申告会からの要望意見をとりまとめ、平成26年度の税制改正要望意見を策定した。個人企業に活力を取り戻し、経営基盤の安定・強化を目指し、税制改正運動に積極的に取り組んでいく。

最重点項目

1.事業主報酬制度の早期実現
個人企業経営者の所得には勤労性が存在します。しかし現在のわが国には、個人企業経営者の勤労性所得を認める税制上のしくみがありません。
一方、個人企業と経営実態を同じくする同族法人企業の経営者に対しては、勤労性を認め役員報酬の支払いが認められています。資本金500万円未満の法人企業の76.4%(平成23年「会社標本調査」国税庁)は、役員報酬を支払うこと等によって法人税の納税額がゼロ(欠損法人)であるといわれています。
また平成22年度税制改正により、いわゆる「一人オーナー会社」の役員給与に対する損金不算入措置が廃止されています。
個人経営の事業所数は、平成8年から同24年の16年間に、128万4505事業所が減少しています(総務省統計局)。個人事業主のおかれた経営環境は厳しい状況下にあります。またわが国は人口減少社会・少子高齢化社会の到来により、とくに地方においては、一段と高齢化・過疎化がすすんでいます。
このような状況のもと地域経済社会にあっては、個人企業の役割が今後も必要不可欠であることは明らかです。あわせて長期にわたる経済不況により個人企業の活力が大きく失われています。個人企業と同族法人企業との税負担格差も拡大しています。税制は公平でなければなりません。
第46回衆議院議員総選挙ならびに第23回参議院議員通常選挙において自由民主党は、「事業主報酬制度」を政権公約(総合政策集)にかかげています。
適正な記帳にもとづいて申告をおこなっている青色申告者の勤労性所得を正当に評価し、給与所得控除の適用を認めた事業主報酬制度の導入を、一刻も早く実現するよう強く要望します。

2.個人企業における事業承継税制の創設
地域社会への貢献と日本経済の持続的成長を促すためにも、個人企業の継続と発展の観点から、事業承継時に事業用資産を非課税とするなどの負担軽減措置を含む個人事業者のための事業承継税制の確立を強く要望します。
第46回衆議院議員総選挙ならびに第23回参議院議員通常選挙において自由民主党は、「個人事業主の活性化、事業承継」を政権公約(総合政策集)にかかげています。

3.青色申告特別控除10万円を30万円に引上げ
現行の青色申告特別控除10万円は、昭和47年に青色申告控除10万円として創設され、40年ほど据え置かれています。青色申告特別控除10万円を30万円に引き上げることを強く要望します。

4.簡易課税制度の事前届出制の省略
「消費税簡易課税制度選択届出書」の事前届出制を省略し、その課税期間の確定申告期に提出する確定申告書で簡易課税制度の選択をできることとし、あわせて従来の2年継続適用については1年にすることを強く要望します。

5.東日本大震災にともなう復旧・復興対策

(1)被災地域により避難(いわゆる仮設住宅を含む)を余儀なくされていた個人事業者が、その事業を再開する際に支出した金額――店舗等の設備投資や車両等の購入などその支出が減価償却資産の取得にあたる場合は、その支出金額を全額その年の必要経費に算入することを認めるとともに、これにより損失が生じた場合には、その金額を9年間にわたり繰越すことができる特例措置を設けるよう強く要望します。
(2)申告等期限が延長中の地域にあっては同延長期限解除にあたり、時間的な猶予を十分に配慮するとともに、同延長期限解除後、延長年分の納税が一括納付になることによる滞納が発生しないような措置を講じることを強く要望します。
(3)震災にともなう損失の繰越控除については、規定の期間を超えて繰越控除ができるよう特段配慮を強く要望します。

6.固定資産税、とくに償却資産の取扱いの改善
償却資産に対する免税点を基礎控除にあらため控除額(現行:150万円)を大幅に引き上げること、また申告期限を3月15日(現行:1月31日)にするとともに、所得税の確定申告をおこなった場合には、償却資産の申告書の提出を省略できるようにすることを強く要望します。

7.税務行政に関わる諸手続の簡素・合理化

各種届出書等の廃止を含めた手続の簡素化等、抜本的な見直しをおこなうことを強く要望します。

その他の重点項目《国税関係》

所得税
●青色申告制度
新規開業者(その年の1月16日以後に開業)の青色申告承認申請書の提出期限を、現行の2か月以内から4か月以内とすること。
●青色申告特別控除
(1)青色申告特別控除65万円の記帳要件を続和すること。
(2)不動産所得のみで青色申告をしている者について、その貸付規模がいわゆる事業的規模でなくても、正規の簿記の原則により記帳をおこなっているなど他の要件を満たしていれば青色申告特別控除65万円を認めること。
●青色事業専従者給与
青色事業専従者給与の届出制を廃止すること。
●減価償却(―省略―)
●所得控除
(1)65歳以上を対象とした高齢者控除50万円を創設すること。
(2)雑損控除の適用にあたってその損害金額の計算を簡便な方法(現行:「被災直前の資産の時価」による計算)にするとともに、その繰越控除期間を5年間(現行:3年間)に延長すること。
(3)医療費控除の計算にあたり適用される控除額、「10万円」または「総所得金額等が200万円未満の場合は、その5%相当額」について、「10万円」を「5万円」に、「5%相当額」を「2.5%相当額」に引き下げること。あわせて人間ドックや予防注射など、医療費の抑制につながる支出を医療費控除の対象とすること。
(4)平成23年分から適用されている扶養控除ならびに障害者控除の改正を、それぞれ改正前に戻すこと。
(5)現行の配偶者控除を堅持すること。
(6)青色事業専従者であっても、所得要件を満たしていれば控除対象配偶者または扶養控除の対象者として認めること。
(7)災害関連寄附金以外の特定寄附金にかかる寄附金控除の額の限度額(現行:総所得金額等の40%相当額)を大幅に引き上げること。
(8)男性むけの特定の寡夫控除35万円を創設し、その適用要件を女性むけの特定の寡婦控除35万円と同一にすること。
(9)基礎控除額を50万円(現行:38万円)に引き上げること。
※相続税・贈与税、消費税等および地方税関係の掲載は省略しています。税制改正要望意見の全文は「機関誌青色申告」ホームページ(http://www.zenaoirobr.jp)をご覧ください。
[カテゴリ:税制改正運動][2013年10月号 4-5ページ掲載記事]
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