個人事業主の所得には勤労性が存在します。しかし現在のわが国には、個人事業主の勤労性所得を認める税制上のしくみがありません。一方、個人企業と経営実態を同じくする同族法人企業の社長には、経営者としての勤労性を認め役員報酬の支払いが認められています。このため所得税法上、勤労性所得にかかわる正当な評価を受けていない個人事業主と同族法人企業の社長との間には、大きな税負担の格差が生じています。税制は公平でなければなりません。
政府は経済の好循環実現にむけて、大企業から中小企業にいたるまで給与の引き上げを要請していますが、個人事業主には給与の支払いが認められていません。
資本金500万円以下の法人企業の72.0%(平成25年「会社標本調査」国税庁)は、役員報酬を支払うこと等によって法人税の納税額がゼロ(欠損法人)であるといわれています。また平成22年度税制改正により、いわゆる「一人オーナー会社」の役員給与に対する損金不算入措置が廃止されています。個人経営の事業所数は、平成8年から同24年の16年間に、128万4千505事業所が減少しています(総務省統計局)。個人事業主のおかれた経営環境は厳しい状況下にあります。
またわが国は人口減少社会・少子高齢化社会の到来により、とくに地方においては、一段と高齢化・過疎化がすすんでいます。このような状況のもと地域経済社会にあっては、個人企業の役割が今後も必要不可欠であることは明らかです。あわせて長期にわたる経済不況により個人企業の活力が大きく失われています。
さらに、与党は平成27年度税制改正大綱の検討事項として「小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランス等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。」ことを明記しています。
適正な記帳にもとづいて申告をおこなっている青色申告者の勤労性所得を正当に評価し、給与所得控除の適用を認めた事業主報酬制度の導入を、一刻も早く実現するよう強く要望します。