11月号

平成28年度 税制改正要望意見[2015年11月号]

全青色は全国各地の青色申告会から寄せられた要望・意見を集約し、平成28年度税制改正要望意見を取りまとめた。
わが国が真の経済成長を遂げるためには、企業の約9割を占める小規模事業者の発展が欠かせない。個人企業に経営活力を取り戻し、経営基盤の安定・強化を目指して、税制改正要望運動に組織を挙げて取り組んでいく。
特に最重点項目として掲げた「事業主報酬制度の早期実現」と「個人企業における事業承継税制の創設」は政府が提唱する地方創生と小規模企業振興基本法の具体的な政策提言として、その実現を確実なものとしたい。
全国の青色申告会の役員・会員各位のご支援を強く願うものである。

最重点項目

1 事業主報酬制度の早期実現
個人事業主の所得には勤労性が存在します。しかし現在のわが国には、個人事業主の勤労性所得を認める税制上のしくみがありません。一方、個人企業と経営実態を同じくする同族法人企業の社長には、経営者としての勤労性を認め役員報酬の支払いが認められています。このため所得税法上、勤労性所得にかかわる正当な評価を受けていない個人事業主と同族法人企業の社長との間には、大きな税負担の格差が生じています。税制は公平でなければなりません。
政府は経済の好循環実現にむけて、大企業から中小企業にいたるまで給与の引き上げを要請していますが、個人事業主には給与の支払いが認められていません。
資本金500万円以下の法人企業の72.0%(平成25年「会社標本調査」国税庁)は、役員報酬を支払うこと等によって法人税の納税額がゼロ(欠損法人)であるといわれています。また平成22年度税制改正により、いわゆる「一人オーナー会社」の役員給与に対する損金不算入措置が廃止されています。個人経営の事業所数は、平成8年から同24年の16年間に、128万4千505事業所が減少しています(総務省統計局)。個人事業主のおかれた経営環境は厳しい状況下にあります。
またわが国は人口減少社会・少子高齢化社会の到来により、とくに地方においては、一段と高齢化・過疎化がすすんでいます。このような状況のもと地域経済社会にあっては、個人企業の役割が今後も必要不可欠であることは明らかです。あわせて長期にわたる経済不況により個人企業の活力が大きく失われています。
さらに、与党は平成27年度税制改正大綱の検討事項として「小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランス等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。」ことを明記しています。
適正な記帳にもとづいて申告をおこなっている青色申告者の勤労性所得を正当に評価し、給与所得控除の適用を認めた事業主報酬制度の導入を、一刻も早く実現するよう強く要望します。
2 個人企業における事業承継税制の創設
地域社会への貢献と日本経済の持続的成長を促すためにも、個人企業の継続と発展の観点から、事業承継時に事業用資産を非課税とするなどの負担軽減措置を含む個人事業者のための事業承継税制の確立を強く要望します。
3 青色申告特別控除10万円を30万円に引上げ
現行の青色申告特別控除10万円は、昭和47年に青色申告控除10万円として創設され、43年間も据え置かれています。青色申告特別控除10万円を30万円に引き上げることを強く要望します。
4 納税代行事務負担が増える消費税改正をおこなわないこと
軽減税率、インボイスなど個人企業の納税代行事務の負担が過重となる消費税改正をおこなわないことを強く要望します。
5 簡易課税制度の事前届出制の省略
「消費税簡易課税制度選択届出書」の事前届出制を省略し、その課税期間の確定申告期に提出する確定申告書で簡易課税制度の選択をできることとし、あわせて従来の2年継続適用については1年にすることを強く要望します。
6 固定資産税、とくに償却資産の取扱いの改善
償却資産に対する免税点(現行:150万円)を基礎控除にあらため控除額を大
幅に引き上げること、また申告期限を3月15日(現行:1月31日)にするとともに、所得税の確定申告をおこなった場合には、償却資産の申告書の提出を省略できるようにすることを強く要望します。
7 マイナンバー制度への対応
マイナンバー制度を導入する際には、国による個人情報の一元管理にともなう情報漏えい、不正利用等を起こさないよう、また民間利活用にあたり、十分な検討と措置を講ずることを強く要望します。
8 税務行政に関わる諸手続の簡素・合理化
各種届出書等の廃止を含めた手続の簡素化等、抜本的な見直しをおこなうことを強く要望します。
[カテゴリ:全青色, 税制改正運動, 要望意見][2015年11月号 4-5ページ掲載記事]
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