2・3月号

2020年2・3月号

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令和2年度 税制改正大綱[2020年2・3月号]

令和元年12月12日、与党は令和2年度税制改正大綱を発表しました。本会の最重点要望項目のうち、青色事業主勤労所得控除の早期実現は、引き続き検討事項に取り上げられました。個人事業者にかかわるおもな内容を掲載します。

検討事項(抜粋・原文まま)

小規模企業税制
小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。
※ 文中の「働き方の多様化を踏まえ」は、全青色の主張が認められ、今回あらたに加筆されました。また、「勤労性所得に対する課税のあり方」は従前どおりです。

税制改正内容(抜粋・要旨)

金融・証券税制
① つみたてNISA制度の延長
「つみたてNISA」は、令和24年12月31日まで5年延長されます。
② 一般NISA制度の廃止と新制度の創設
「一般NISA」は、令和5年12月31日の口座開設期限をもって制度が終了となります。あわせて令和6年から特定非課税累積投資契約(仮称)に係る非課税措置が創設され、これまでの「つみたてNISA」との選択適用になります。
③ ジュニアNISA制度の廃止
「ジュニアNISA」は、令和5年12月31日の口座開設期限をもって制度が終了となります。
※ NISA(少額投資非課税制度)とは、20歳以上の居住者などを対象とした非課税口座で取得した上場株式などについて、その配当などやその上場株式などを売却したことにより生じた譲渡益が一定期間非課税となる制度です。

土地・住宅税制
①低未利用土地などの長期譲渡所得の特別控除制度の創設
令和4年12月31日までにおこなわれる所有期間5年超の一定の低未利用土地などの譲渡(配偶者などへの譲渡、対価の額が500万円超の譲渡を除く)について、その長期譲渡所得の金額を上限に、100万円を控除する制度が創設されます。
②その他の土地・住宅税制の見直し
・ 短期所有土地の譲渡などに係る事業所得などの課税の特例停止措置の3年延長
・ 特定の居住用財産の買換えおよび交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限の2年延長
・ 居住用財産の買換えなどの場合の譲渡損失の繰越控除などの適用期限の2年延長
・ 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除などの適用期限の2年延長
・ 優良住宅地の造成などのために土地などを譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例について、一部見直しのうえ適用期限の3年延長

消費税
認可外保育施設などの利用料の非課税化
1日当たり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設などで、一定の基準を満たすものの利用料について消費税が非課税になります。なお、この改正は令和2年10月1日以後におこなわれる資産の譲渡などに適用されます。

その他の国税
①未婚のひとり親に対する措置の創設
生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下)を持つ未婚の者(寡婦または寡夫である者を除く)で、合計所得金額が500万円以下であるなど一定の要件を満たす場合は、総所得金額等から35万円が控除されます。なお、この改正は令和2年分から適用されます。
②寡婦(寡夫)控除の見直し
扶養親族または生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下)を有する寡婦の要件に、合計所得金額が500万円以下であることが追加されます。また、生計を一にする子を有する寡婦に係る寡婦控除および寡夫控除の控除額が35万円(現行27万円)に引き上げられます。なお、この改正は令和2年分から適用されます(図表)。

③国外居住親族に係る扶養控除の見直し
非居住者である親族に係る扶養控除の対象となる親族から、年齢30歳以上70歳未満の者であって次のいずれにも該当しない者が除外されます。
イ 留学により非居住者となった者
ロ 障害者
ハ その居住者からその年における生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者
なお、この改正は令和5年分から適用されます。
④少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例の延長
常時使用する従業員の数の要件を500人以下(現行1,000人以下)に引き下げたうえ、適用期限が2年延長されます。
⑤肉用牛の売却に係る課税の特例の延長
適用対象となる売却の範囲に令和2年6月21日以後におこなう認定を受けた地方卸売市場での売却を加えたうえ、適用期限が3年延長されます。
⑥雑所得に係る見直し
その年の前々年分の雑所得の収入金額が300万円以下の人は、その年分の雑所得の金額の計算に、いわゆる現金主義による所得計算の特例が適用できるようになります。同じく300万円を超える人は、現金預金取引などの関係書類を5年間保存することになります。同じく1,000万円を超える人は、その年分の確定申告において雑所得の総収入金額および必要経費を記載した書類を添付することになります。なお、この改正は令和4年分から適用されます。
⑦源泉徴収に係る見直し
源泉徴収義務者が給与などの支払い(青色申告者の事業所得の金額などに係る支払いを除く)に係る源泉所得税を納付しなかった場合、推計課税をすることができるようになります。なお、この改正は令和3年1月1日以後に支払う給与などに適用されます。
⑧納税地の異動時の振替納税手続きの簡素化
振替納税をおこなう個人が他の税務署管内に納税地を異動した場合に、従前の金融機関の口座から振替納税をおこなう旨を異動届出書などに記載したときは、引き続き振替納税がおこなわれるようになります。なお、この改正は令和3年1月1日以後の手続きから適用されます。

地方税
①国民健康保険税の課税限度額の見直し
国民健康保険税の基礎課税額に係る課税限度額が63万円(現行61万円)に、介護納付金課税額に係る課税限度額が17万円(現行16万円)にそれぞれ引き上げられます。また、国民健康保険税の減額の対象となる所得の基準についても所定の引き上げがおこなわれます。なお、この改正は令和3年度から適用されます。
②所有者不明土地などに係る固定資産税の見直し
土地・家屋などの登記簿上の所有者が死亡し、相続登記がされるまでの間、その土地などを現に所有している者に固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができるようにするとともに、所有者が不明の場合は使用者に固定資産税が課されるようになります。
③固定資産税の減額措置の延長
新築住宅、新築の認定長期優良住宅、耐震・バリアフリー・省エネなどの改修をおこなった住宅に係る固定資産税の減額措置の適用期限がそれぞれ2年延長されます。
[カテゴリ:税制改正大綱,税制改正,要望意見,全青色][2020年2・3月号 4-6ページ掲載記事]
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