11・12月号

令和3年度 税制改正要望意見[2020年11・12月号]

全青色は、全国の青色申告会から寄せられた要望をもとに、令和3年度税制改正要望意見を取りまとめた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けている個人企業の経営活力を取り戻すためにも、要望実現に向けて運動に取り組む。全国の青色申告会の役職員、会員各位のご支援、ご協力をお願いしたい。

最重点要望事項

1.青色事業主勤労所得控除の早期実現

わが国には、個人事業主の勤労性所得を認める税制上のしくみはない。一方、個人企業と経営実態が類似する同族法人企業の社長には、役員報酬が支払われ、給与所得控除が認められている。両者に共通する勤労性所得に対する課税のあり方に不公平が生じている。このため個人事業主と社長とでは、所得税・住民税での税負担に大きな格差がある。
また伝統的な自営業者が減る一方、働き方の多様化により給与所得者に類似した雇用的自営業者やフリーランスが増えている。働き方の違いによって不利益が生じない公平な税制を構築すべきである。
正しく帳簿を作成し、適正な青色申告をおこなう個人事業主に、勤労所得控除の適用を所得税法上に認めることは、課税のあり方を公平にすることができる。青色事業主勤労所得控除の早期実現を要望する。

2.消費税制の簡素化

(1)軽減税率制度の見直し
軽減税率制度は、その対象品目の区分けが消費者と事業者の双方にとってわかりにくく、小規模事業者の納税事務の負担が過重となることから、対象品目を見直すことを要望する。
(2)適格請求書等保存方式(インボイス制度)への移行の取りやめ
令和5年10月以後に予定されている「適格請求書等保存方式」(いわゆるインボイス制度)への移行により、免税事業者が取引から排除されることが想定される。また、小規模事業者の納税にかかわる事務負担に多大な影響を与える。
消費税導入以来、請求書等にもとづいて、取引を課税・非課税・不課税等に区分した帳簿により適正申告を担保してきた。複数税率であっても軽減税率の適用等が記載された現行の区分記載請求書等があれば、引き続き適正申告をおこなうことができる。
インボイス制度への移行は取りやめ、令和5年10月以後も現行の区分記載請求書等保存方式を堅持することを要望する。

3.青色申告特別控除10万円を20万円に引き上げ

白色申告者の記帳水準の向上や税務手続きの電子化をはかるため、イータックスによる電子申告または電子帳簿保存をおこなう青色申告者には、現行の青色申告特別控除10万円を20万円に引き上げることを要望する。

4.個人事業者の事業承継税制の円滑な運用

個人事業者の事業承継税制の円滑な運用をはかるよう、青色申告決算書の貸借対照表に記載された業務用に使用している自家用登録の自動車も特定事業用資産に含めるなど、対象となる特定事業用資産の範囲を拡大するとともに、その資産評価のあり方を見直し、個人事業者の事業承継をさらに支援することを要望する。

5.災害損失控除の創設

東日本大震災や熊本地震などの地震災害、豪雨や台風による風水害が発生し、甚大な被害をもたらしている。自然災害による被災者の被災資産の再建等には相当な年月を必要とする。現行の雑損控除から自然災害による損失を分離して、あらたに災害損失控除の創設を要望する。 災害損失控除の創設にあたっては、同控除以外の所得控除を適用した後に災害損失控除を適用することとする。また、法人税における災害損失欠損金の繰越期間が10年であることをふまえ、所得税にあらたに創設する災害損失の繰越期間は災害損失の金額をすべて控除しきることを前提に設定すべきである。なお、災害損失の金額には、自然災害による資産損失のほかに、避難や移転にともなう災害関連支出も含めることとする。

6.個人事業者に係る純損失の繰越期間の延長

青色申告をおこなう法人の欠損金額の繰越期間は、平成28年度の税制改正により10年間とされている。一方、青色申告をおこなう個人事業者の純損失の繰越期間は3年間であり、個人と法人との間に制度格差・不公平が生じている。 新型コロナウイルス感染症の影響により、自助努力をしてもなお赤字経営に苦しんでいる個人事業者が多数いる。個人事業者の事業継続のためにも、令和2年分以降に生じた各年分の純損失の金額を10年間(現行3年間)にわたり繰越控除できるようにすることを要望する。

本要望意見は、コロナ禍にあって、令和2年9月11日に開催した正副会長会で決定した内容です。「重点要望事項」「その他の要望事項」を含めた税制改正要望意見の全文は税制改正要望意見(関連リンク参照)に掲載します。
[カテゴリ:全青色, 税制改正][2020年11・12月号 4-6ページ掲載記事]
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