8・9月号

フリーランス新法が成立 [2023年8・9月号]

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下、フリーランス新法)が成立し、令和5年5月12日に公布されました。公布の日から1年6か月以内に施行されます。

フリーランス新法が作られた背景

働き方の多様化が進み、個人で働くフリーランスが増えました。これまでも業務を下請けする事業者が発注者から不当な行為を受けることがないよう、独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)や下請法(下請代金支払遅延等防止法)などで規制されてきましたが、さらに個人が事業者として安心して働けるよう、フリーランス新法が制定されました。

フリーランス新法のポイント

対象となる業務・事業者
従業員がいない個人や代表者以外に役員・従業員がいない法人である特定受託事業者に、業務(物品の製造、情報成果物の作成、役務提供)を委託する特定業務委託事業者が規制の対象になります(図表)。下請法では資本金1000万円超の法人が規制の対象でしたが、フリーランス新法では従業員のいる個人事業者も特定業務委託事業者として規制の対象になります。
なお、従業員には短い時間や期間で一時的に雇用されるアルバイトなどは含まれません。法案審議中の国会答弁では、青色事業専従者をはじめとする家族従業員も含まれないとされていました。


特定業務委託事業者が守るべきこと
特定業務委託事業者には、次の取り組みが求められます。
① 業務委託をした場合は、ただちに業務の内容、報酬の額、支払期日そのほかを書面または電磁的方法により特定受託事業者に明示しなければなりません。
※ ①は発注者が従業員のいない個人事業者の場合も対象になります。
② 報酬の支払期日は、成果物・役務を受領した日から60日以内のできるだけ短い期間内としなければなりません。
③ 一定期間継続する業務委託をする場合、特定受託事業者の責任ではない理由で成果物などの受取拒否・報酬減額・返品をすることのほか、相場よりいちじるしく低い報酬の設定、物品購入や役務の利用の強制をしてはならず、金銭・役務などの提供の強制や特定受託事業者の責任ではない理由による変更・やり直しによりその利益を不当に害してはいけません。
④ 特定受託事業者の募集広告は正確・最新のものとすることやハラスメントに対応する相談体制などを整備すること、一定期間継続する業務委託をする場合に育児・介護などと業務の両立への配慮や中途解除する場合の30日前までの予告をおこなうことなどが求められます。

違反した場合などの対応
違反した特定業務委託事業者などに対して、指導、勧告、公表、命令などがおこなわれ、命令違反や検査拒否などに対しては50万円以下の罰金が科されます。

個人事業者が注意すべきこと

発注者側の場合、これまで口頭で業務を委託していたのであれば、書面や電子メールなどで業務内容や報酬の支払期日などを提示する必要があります。定期的に同じ業務を依頼するのであれば、一定期間についての委託条件を事前に書面で取り交わす方法も考えられます。受注者側の場合、契約条件が書面などで明確化されますので、条件どおりに業務をおこなったか否かを発注者から問われるおそれもあります。 この法律は今後、政省令などが公表され、令和6年秋頃までに施行されます。関係する業務をおこなう方は、十分な準備をおこなってください。
[カテゴリ:税制改正,働き方改革,ライフスタイル][2023年8・9月号 8-9ページ掲載記事]
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