2・3月号

青色申告会の要望実現 令和6年度 税制改正大綱[2024年2・3月号]

与党は令和5年12月14日、令和6年度税制改正大綱を発表しました。個人事業主に係るおもな改正の概要を掲載します。なお、扶養控除、ひとり親控除、生命保険料控除などの見直しが検討されましたが、令和6年度中に決定することとなりました。

青色申告会の税制改正要望

青色申告会の税制改正要望(令和5年10・11月合併号既報)では、次の項目が実現しました。

個人事業主の事業承継税制の円滑な運用

青色申告をおこなう個人事業主の事業用資産を贈与や相続などで取得したときに贈与税または相続税の納税が猶予される個人版事業承継税制は、都道府県知事の確認を事前に受ける個人事業承継計画の提出期限が令和8年3月31日まで2年延長されます(現行:令和6年3月31日まで)。

なお、次の項目は昨年の大綱と同じ文章で、検討事項に取り上げられました。

青色事業主勤労所得控除の早期実現

小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

個人事業主に係るおもな改正(抜粋・要旨)

所得税

定額減税と給付金の実施
納税者(合計所得金額1805万円超を除く)および配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の定額減税がおこなわれます。給与所得者・年金所得者は令和6年6月以降の源泉徴収・年末調整・確定申告・特別徴収など、事業所得者は令和6年分の予定納税・確定申告・普通徴収などでそれぞれ減税されます。 なお、住民税非課税世帯や低所得世帯、子育て中の世帯には、令和6年6月以降に最大10万円の現金給付がおこなわれます。

住宅ローン減税の子育て特例の実施
配偶者がある40歳未満の人、40歳未満の配偶者がある40歳以上の人または19歳未満の扶養親族がある人が、認定住宅などの新築もしくは未使用認定住宅の取得などをして令和6年1月1日から同年12月31日までに居住した場合は、住宅借入金等を有する
ときの所得税額の特別控除(住宅ローン減税)の子育て特例(図表)が適用されます。
※ その他の要件は、現行の住宅ローン減税と同様とされます。

少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例の延長
中小企業者に該当する青色申告をおこなう個人事業主が、取得価額が30万円未満である少額減価償却資産を取得したときに、その取得価額をその年分の必要経費に算入できる特例は、令和8年3月31日まで2年延長されます
(現行:令和6年3月31日まで)。

賃上げ促進税制の見直し
個人事業者が前年より従業員の給与等を増加させた場合にその増加額の一部を所得税から税額控除できる賃上げ促進税制については、上乗せ措置の見直しをおこなったうえで、税額控除率が10%に引き下げられます (現行:15%)。

倉庫用建物等の割増償却制度の延長
倉庫用建物等の割増償却制度は、設備要件等の見直しをおこなったうえで、令和8年3月31日まで2年延長されます(現行:令和6年3月31日まで)。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除などの延長
マイホーム(旧居宅)を売却して新たにマイホーム(新居宅)を購入したときに旧居宅の譲渡による譲渡損失が生じた場合、他の所得との損益通算、または損益通算しても控除しきれない譲渡損失を3年内に繰り越すことができる繰越控除の特例が、令和7年12月31日まで2年延長されます(現行:令和5年12月31日まで)。
※特定の居住用財産の買換えおよび交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例についても、適用期限が2年延長
されます。

消費課税

高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度などの適用制限の見直し
高額特定資産を取得した場合に事業者免税点制度と簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、
その課税期間において取得した金または白金の地金等の額の合計額が200万円以上である場合が加えられます。
※この改正は、令和6年4月1日以後に国内においておこなう金等の課税仕入れ等から適用されます。

外国人旅行者向け免税制度の見直し
外国人旅行者向けの消費税免税制度による免税品と知りながら、その物品を課税仕入れしたときは、仕入税額控除制度の適用が認められないことになります。
※この改正は、令和6年4月1日以後に国内においておこなう当該課税仕入れから適用されます。

資産課税

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の延長
両親・祖父母などの直系尊属から住宅取得等の資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置が、
対象家屋の一部見直しのうえ、令和7年12月31日まで2年延長されます(現行:令和5年12月31日まで)。
※特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例の適用期限は3年延長されます。

土地に係る固定資産税等の負担調整の延長

土地に係る固定資産税・都市計画税について、宅地等および農地の負担調整措置、商業地等に係る条例減額制度、税負担急増土地に係る条例減額制度が、令和8年度まで3年延長されます。

固定資産税の減額措置の延長

新築住宅、耐震改修やバリアフリー改修、省エネ改修等をおこなった一定の住宅に係る固定資産税の減額措置が、令和8年3月31日まで2年延長されます(現行:令和6年3月31日まで)。

不動産譲渡に関する印紙税の特例の延長

不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税を軽減する特例が、令和9年3月31日まで3年延長されます(現行:令和6年3月31日まで)。

その他の国税

調書の提出をe-Taxとする基準の引き下げ
調書の提出をe-Tax(イータックス)でおこなうことを義務とする提出枚数が、30枚以上に引き下げられます(現行:100枚以上)。
※この改正は、令和9年1月1日以降に提出すべき調書に適用されます。

法人税の交際費等の見直し

法人税の損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準が、1人当たり1万円以下に引き上げられます(現行:5000円以下)。
※この改正は、令和6年4月1日以後に支出する飲食費に適用されます。なお、接待飲食費に係る損金算入の特例、 資本金等が1億円以下の中小法人に係る損金算入の特例の適用期限は3年延長されます。
[カテゴリ:全青色, 税制改正運動][2024年2・3月号 4-6ページ掲載記事]
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